ミシェル・フーコー『性の歴史IV 肉の告白』—欲望の主体はどのように形成されたのか

ミシェル・フーコー『性の歴史IV 肉の告白』—欲望の主体はどのように形成されたのか

フーコー最後の主著、ついに完結

ミシェル・フーコーの『性の歴史』シリーズは、性に関する言説の変遷を追いながら、人間の主体形成の過程を探る壮大なプロジェクトでした。その最終巻となる『性の歴史IV 肉の告白』は、フーコーの没後三十余年を経て刊行されました。

本書では、2〜5世紀のキリスト教教父たちの文献を詳細に分析し、悔悛の実践、修道制の発達、処女・童貞性と結婚などのテーマを通じて、欲望の解釈学の成立を解明しています。フーコーは、キリスト教倫理がいかに夫婦を中心とする性を合理化し、近代の厳格な性規範につながるものを用意していったのかを明らかにしました。

キリスト教倫理と欲望の解釈学

本書の中心テーマは、キリスト教初期における「欲望の解釈学」の成立です。フーコーは、キリスト教が性をどのように規範化し、自己省察と告白を通じて欲望を管理する仕組みを作り上げたのかを分析しています。

特に注目すべきは、処女・童貞性の技法や結婚の善についての議論です。キリスト教の倫理が、性を単なる生殖の手段として捉えるだけでなく、精神的な純潔や自己認識の手段としても位置づけていたことが、本書を通じて明らかになります。

フーコーの遺稿としての意義

『性の歴史IV 肉の告白』は、フーコーの生前に完成していたものの、彼の遺言により長らく出版が見送られていました。しかし、2018年にフランスで原書が刊行され、日本語版も2020年に新潮社から出版されました。

この最終巻の刊行によって、『性の歴史』シリーズはようやく完結し、フーコーの思想の全体像がより明確になりました。性に関する言説の変遷を通じて、人間の主体形成のプロセスを探るフーコーの視点は、現代においても重要な示唆を与えてくれます。

まとめ

『性の歴史IV 肉の告白』は、フーコーの思想を理解する上で欠かせない一冊です。キリスト教倫理と欲望の管理の関係を探ることで、現代社会における性の規範のルーツを知ることができます。フーコーの遺稿として刊行されたこの書籍は、哲学・思想の分野において重要な位置を占めるでしょう。


肉体の告白:フーコーが描く性の歴史の深層

# 性の歴史 IV 肉の告白

**著者:** ミシェル・フーコー  
**出版社:** 新潮社  
**出版年月:** 2020年12月  
**ISBN:** 9784105067120  

## 概要
『性の歴史 IV 肉の告白』は、ミシェル・フーコーの没後30年以上を経て刊行された、彼の最後の主著です。この巻では、初期キリスト教の教父たちの文献を詳細に検討し、「欲望の解釈学」の成立を探求しています。生殖、貞節、結婚といった概念を背景に、自己への省察と告白を通じて形成された欲望の哲学が描かれています。

## 内容の特徴
- **欲望の主体形成:** 人間がどのようにして「欲望する主体」として形成されたかを分析。
- **初期キリスト教の視点:** 紀元2世紀から5世紀にかけてのキリスト教教父の文献を丹念に調査。
- **哲学的洞察:** 性に関する言説の氾濫を起点としたフーコーの考察が、ついに完結。

## 注目ポイント
フーコーは、性をめぐる近代の権力構造を「抑圧の仮説」として批判し、古代ギリシャ・ローマからキリスト教初期までの歴史を遡りながら、欲望の系譜学を構築しました。この巻では、特に「肉の経験」と「欲望の解読」に焦点を当てています。

## 読むべき理由
現代社会における性と欲望の概念を深く理解するための必読書です。フーコーの鋭い洞察が、私たちの生と性に対する認識を問い直すきっかけを提供します。

**価格:** ¥5,500(税込)  
**ページ数:** 576ページ  

詳細は[こちら](https://www.shinchosha.co.jp/book/506712/)。